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上を向いて歩こう

上を向いて歩こう 泣く前にきっと何かが見つかる-『Last Christmas』

 クリスマスにはつきものの『クリスマス映画』。家族や恋人、友達、果ては見知らぬ人々も巻き込んで、愛と優しさとクリスマスの奇蹟がセットになった泣ける映画、というイメージだ。真っ先に思い浮かぶのは、文豪Charles Dickensの小説『A Christmas Carol』(1843 年)を原作とした映画の数々。
原作に忠実に作られたもの、ミュージカル仕立て、アニメーション、現代風に翻案されたものなど様々な作品がある。大人も子供も楽しめる代表作は、人形アニメ映画『Rudolph the Red-Nosed Reindeer/ ルドルフ 赤鼻のトナカイ』(1964 年)。原作は1939年に出版され250万部を売り上げたベストセラー。
みんなが知っているクリスマスソングは、この物語を元に作られた。1964 年にアメリカのNBC 局で初放送され、1972 年に放送局がCBS に移ってからも毎年クリスマスシーズンに放送されている。50 周年を迎えた2014 年には記念切手も発行された。実はこの映画、コンセプトデザインなどはアメリカで作られているが、実際の撮影は日本で行われた、とても日本と縁の深い作品だ。
 こうした定番映画を見て感動したり泣いたりするのは、私にとって「1年に一度の感情の強制禊ぎ」。澱んだ心が洗われるような気がして、スッキリする。
 そして迎えた今年のクリスマスシーズン。現在公開中の『Last Christmas』は、クリスマスの奇蹟と男女の恋物語で紡がれるハッピーエンドの心温まる映画…という定番を踏襲しつつ、ちょっとした捻りが効いている。それもそのはず、監督のPaul Feig『Bridesmaids』(2011 年)、『Spy』(2015)、『Ghostbusters』(2016 年)など女性を主人公にしたコメディー映画でブレ イクした、「この監督なら間違いない!」と思わせる手腕の持ち主。面白くないわけがない。舞台は英国・ロンドン。歌手になる夢を追うも上手く行かず、家族や友達との関係も散々なKate(Emilia Clarke)は、仕事や生活の鬱憤を酒で晴らす日々。そんなKate の前に現れた謎めいた男性Tom(Henry Golding)。「上を見て。きっと違う景色が見える」と言うTom と過ごすうちに、 Kate の生活は少しずつ変わって行く。
 タイトルの『Last Christmas』は1980 年代に世界中で人気を博したWham! のヒット曲。全編にわたって流れるWham! の名曲の数々も楽しめる。
見終わった時には、ロンドンへ行きたくなっているかも!

高野 宣李(たかの せんり)
Twitter: @usagy_van
さすらいの旅がらすライター。2002 年からバンクーバーに在住。好きな海外ドラマ、映画は数知れず。面白ければ何でもござれの雑食系で、カナダ、アメリカ、日本を股に掛けて映画やテレビを追っ掛ける日々。

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