火曜日は映画に行こう!
それは、どちらも美しい愛の物語

それは、どちらも美しい愛の物語  

 2017 年も押し詰まった12 月25 日のクリスマス、舞台も設定も登場人物もまるで違っていながら、いずれも残酷なまでに美しい愛を描いた2本の映画を観た。
■『Call Me By Your Name』( Luca Guadagnino監督)
 北イタリアを舞台に、17 歳の青年エリオ(Timothée Chalamet)と24歳の青年オリヴァー(Armie Hammer)の恋を描く。戸惑い、ためらいながらも惹かれていき、やがて2 人は結ばれる。夢のように美しいひと夏の恋で、やがて夏は終わり夢は醒める。言ってしまえば「ありがち」なストーリーだが、主演俳優2 人によって瑞々しいまでの生命が注ぎ込まれ、目が釘付けになる。画面の美しさを堪能するのはもちろんのこと、加えてぜひ耳を澄ませてみて欲しい。虫の声、水飛沫、風、雨、衣擦れ…そんな多彩な音に囲まれると、木々の葉を揺らして風が運んでくる甘い果物の香りさえも感じられる気がする。五感に訴えかけてくる、そんな作品だ。特にラストシーンには胸が締めつけられる。各地の映画祭で上映され、賞も受賞している本作は、劇場公開前から早くも2018年アカデミー賞の本命と言われている。
■『The Shape of Water』(Guillermo del Toro 監督)
 まさに、大人のためのファンタジーだ。1962 年のボルチモア、政府の研究機関で清掃員として働くイライザ(Sally Hawkins)は、研究材料として囚えられた半魚人と出会う。イライザは声を失っていて、会話の手段は手話。彼女の愛する音楽と手話で半魚人と心を通わせていくが、虐待され殺されそうになる半魚人を見て、施設から救い出そうとする。夜の帳と水のカーテンに覆われたシーンがほとんどなのに、画面から伝わってくる温かみと柔らかさに魅せられる。成就するはずのない愛を、どう描くのか?
 ダーク・ファンタジーの第一人者、del Toro 監督の最高傑作とも評される本作もまた、アカデミー賞の賞レースに名前を連ねている。  まるで対照的な2つの愛の物語、あなたはどちらがお好み?

高野 宣李(たかの せんり)
Twitter: @usagy_van
さすらいの旅がらすライター。2002 年からバンクーバーに在住。好きな海外ドラマ、映画は数知れず。面白ければ何でもござれの雑食系で、カナダ、アメリカ、日本を股に掛けて映画やテレビを追っ掛ける日々。
Web 媒体を中心に海外ドラマや映画レビューなどを執筆。
海外ドラマ&セレブニュースサイトtvgroove.com
オフィシャルブログ『usagy のアメリカンTV 気まぐれウォッチング』を不定期更新中。

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