10月・寒露の候
10月に入ると寒露の候、日に日に陽が短くなってくる頃です。暦上では初冬で朝露が凍り、北から美しい紅葉の見頃が南下し始める時期でしょうか。各地では行楽シーズンを迎え、紅葉が人々の目を楽しませてくれる季節です。この時期は「味覚の秋」。たくさんの季節の旬の食材も私達を楽しませてくれます。
味覚とは?
そもそも「味覚」って何でしょうか? 今回は私達が感じる「味覚」と日本酒に関わりのある「旨味」についてお話をしていきたいと思います。
「味覚」とは、私達人間の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の1つであり、食べ物を感じる感覚です。
日本語には、「味に関する言葉」が実に多いのではないでしょうか。それだけ四季それぞれの旬の食材が豊富にあるということでもあります。これは日本の美しい季節や食材が日本の伝統文化にも大きく影響してきたことを意味しています。
旨味と日本酒
「旨味」は、甘味、酸味、塩味、苦味と並んで、5つの基本的な味の1つとして挙げられます。そして「旨味」はお料理で「おいしさ」を生む大切な役割を果たしているのです。代表的な「旨味」の中には、和食で「だし」を取る時に使用する昆布に含まれるグルタミン酸、かつお節に含まれるコハク酸などが挙げられますが、我々日本酒の業界で、このグルタミン酸がタンパク質を構成するアミノ酸の1つであることから、このアミノ酸を「旨味」として捉えることがあります。このアミノ酸の量が多いと「重たい酒(日本酒度が低い)」、少ないと「軽い酒(日本酒度が高い)」になる傾向があります。つまりこの「旨味」は酒質を左右する重要な要素なのです。
天高くうろこ雲の秋空、田んぼに天日干しされた稲穂の壁がまっすぐに続いています。やっと収穫の季節を終え、農夫達にも安堵の笑みが溢れます。そして、田の神に収穫を感謝し神酒を奉げ、家族と集い収穫を祝うのです。お酒が農夫達の笑顔を繋ぎます。収穫に感謝して一献献上!