ワークパーミットへの道
④ 申請書類の却下 ―働けない恐怖―

 ここでちょっとケビンのお話。  

 彼は私たちと同様、ワーキングホリデーのビザを取得してアイルランドから渡加し、ダウンタウンの店舗で長い間働いているバリスタの先輩であった。音楽とサッカーが大好きで、毎日お店に遊びに来てくれるお客さんは、ケビンと話をするのを楽しみにしているように見えた。歳も全く同じということもあり、打ち解けるのに時間はかからなかった。洋楽や洋画の知識がなかった私に、オススメのアーティストや映画を教えてくれたり、サッカーのオフサイドを何度見ても理解できない私に、絵を交えて熱心に説明してくれたり、何よりもバリスタの先輩としてコーヒーの美味しい淹れ方を教えてくれた。  

 彼はホスピタリティー精神に満ちていて、訪れたお客さんに対する気遣いも学ぶところは多かった。時間のある時は人生について熱く語ることもあった。 今考えたら、私は本当にラッキーだと思う。改めて、カナダで出逢ったすべての人に感謝の気持ちでいっぱいだ。  

 そんなケビンが帰国してしまった後、私は本店の店舗に異動になった。ビザを申請し始めて5ヵ月近くが経っていたが、何の音沙汰もなかった。随分精神的に慣れてきたとはいえ、予想の時期が過ぎてしまえば、その分焦りも大きくなる。  

 そんなある日、エージェントの方から連絡があった。ワークビザの申請が一時的に却下になってしまったというのだ。というのも、ワークビザを発行するのに必要な政府からの書類申請に時間がかかりすぎてしまい、ワークビザの申請が先に始まってしまったからだ。政府からの書類さえ揃えばワークビザ申請を復活させることはできるが、一時却下になってしまった限り働くことはできなくなってしまった。  

 ここからは時間の勝負。ちょっとずつ雲行きが怪しくなってきたように思えた。それから自宅待機を余儀なくされた私は、たくさんとは言えない貯金を切り崩して生活することになった。それがどのくらい続くのかわからない。海外での一人暮らし、仕事のない不安、ビザという初めての経験。考えても仕方がないので極力英語の勉強に力を入れようと、奮発してTOEIC の受験に挑戦してみたり、図書館に通って勉強したり、語学学校の無料トライアルに参加してみたりして時間を過ごした。不安で仕方なかったのは事実だけれど、今思い返すと、この経験で少しだけ精神的に強くなれたような気もする。


Yuka

Yuka

英語とカフェが好きで、コーヒーの街・バンクーバーにワーホリしにやってきました。趣味は写真を撮りに散歩すること。日々英語と仕事に奮闘中。

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