『長井 明』 バンクーバーシンフォニーを語る  その3

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 1月のVSO コンサートのお薦め公演2つを取り上げたいと思います。

Emanuel Ax with the VSO(1月18日)

 現在アメリカを代表するピアノの巨匠 Emanuael Ax をソリストに迎えての特別コンサート。1970年後半から80年始めに彼が音楽界にデビューした当初にはよくVSO と共演に来ました。

 私もコンサートマスターを始めた頃でしたのでコンサート後に食事や飲みに行って音楽の話を真夜中までする仲間でした。とても真面目な音楽家なのですがそれを決して表に出したがらない性格の彼は、いつもジョークばかり言ってみなとよく笑いました。日本人の奥さんを持つ彼は、何か私と特別な友好感を持つ間柄だったのかもしれません。

 その彼は今やアメリカを代表するバイオリニストPerlman、チェリストYo-Yo Ma、ピアニストEmanuel Ax の3大巨匠に成長しました。

 忙しい演奏活動の合間には後進の指導にも力を入れる大先生でもあり、なかなか忙しくてバンクーバーに来てくれなくなってしまいました。円熟しきった彼の演奏するベートーベンのコンチェルト『皇帝』とモーツァルトの一番人気のあるコンチェルト22番の2曲をぜひ聴いて欲しいです。

VSO New Music Festival (1月24日、25日、27日、28日、29日)

 5年目を迎えるVSO 現代音楽祭です。音楽監督のBramwell Tovey も作曲家の一人であり、2年前にはオペラも作曲、VSO が初演、レコーディングしてJuno Award にノミネートされました。Tovey 氏がシーズン中で一番精力的に取り組むFestivalです。

 とっつきにくい現代音楽、耳慣れない音楽、今生きている作曲家の曲をなぜ聴衆に演奏しなければならないかを良く理解しているTovey 氏の情熱を知るいい機会でもあります。

 24日は17 人のジャズプレーヤーを集めてカナダの作曲家John Korsrud が構成したバンクーバーのHard Rubber Orchestra 公演(Orpheum)。

 25日28日は、Christ Church Cathedral でバロック音楽専門のPacific Baroque Orchestra のバロック楽器を使用しての現代作品。独特の静けさを持つバロック楽器で演奏される音にぜひ注目して欲しいです。

 27日Tovey 指揮、VSO とUBC Choir 共演で実績高い2人のカナダの作曲家Jeffrey Ryan とGlenn Buhr のRequiem を2曲。モダンなオーケストラの音にコーラスのカラーを交えるとても絢爛豪華な展覧会になるのではないかと私は大いに期待しているプログラムです。

 29日最終日はVSO のメンバー6人が現代音楽だけを研究、演奏しているグループStanding Wave とTovey の指揮で小編成によるデリケートな響き。

今年はVSO の他に、3つ違うグループの協力を得て新しい方向性を感じるFestival です。今日の複雑な世界・社会・人間の中から生み出された音楽の世界を耳と肌で感じ取っていただきたい現代音楽祭の1週間です。

VSO 公演予定とチケット購入

2016/2017年の公演予定

チケット購入サイト

VSO カスタマーサービス  604-876-3434


長井 明

旭川出身。東京藝術大学卒業後、フルブライト奨学金を得て渡米、インデイアナ大学大学院修了。J.ギンゴールド、江藤俊哉、鷲見三郎氏等に師事。毎日新聞社主催学生音楽コンクール全国第一位および音楽コンクール入賞。1976年よりVancouver Symphony Orchestrコンサートマスターに就任。バンクーバーを本拠地に、日本国内でも様々な音楽活動を行ってきた。ソロや室内楽など数多くの公演も行う。バンクーバーでは、奥様の長井せりさん(バイオリン・ビオラ)とアレキサンダー恵子さん(ピアノ)とのPacific North Trioで、15年に渡り活動を続けてきた。“VSO終身名誉コンサートマスター”となった現在も、VSOの演奏を支える他、幅広い音楽活動を続けている。
http://www.vancouversymphony.ca

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