ツナママ日記

北米のスポーツシーンで活躍するみなさんが語る 日本とカナダのスポーツ界の現状 対談者たち

小川学

スポーツ
トレーナー


千葉県出身。元消防士。’03に来加し、現在は指圧師・スポーツトレーナーとして活躍中。世界選手権やオリンピックなどのアスリートのトレーニングを手掛ける。バンクーバー五輪では聖火ランナーとして参加。
大阪府出身。’10年5月末より北米マイナープロバスケットリーグに参戦するBC州のチーム、BC Titansで活躍中。日本ではプロbjリーグで活躍。「英語はほとんど…」という彼は、言葉の壁など気にせずに「バスケが好き」という一心不乱な気持ちで海外でプレーするハングリー精神旺盛な選手。

田村大輔
プロバスケット
ボール選手

藤野哲平

Canadians ボールパーク オペレーションスタッフ


神奈川県出身。ホシノドリームズプロジェクト1期生として、 ’08にスポーツビジネスを学ぶために来加。7歳から大学卒業まで野球をし続けていた根っからの野球少年。現在はCanadiansでマーケティングスタッフとして活躍中。
福井県出身。田村選手が所属するBC Titansでマネージャー兼コーチを務める。幼少期にバスケと出会う。ビクトリアで通っていたカレッジ在学中にマネージャーやアシスタントコーチなどを経験。’09年のTitans発足当初からアシスタントコーチとしてチームに貢献している。

岐津将平
Titansアシスタン
トコーチ&チーム
マネージャー


 6月上旬、バンクーバー某所。カナダのスポーツ界で、文化や言語の壁を乗り越えて活躍している日本人4人が集まった。選手として前線で活躍している者や、影で支えている者など、活動内容は様々。『スポーツ』という共通のパッションを持った4人が、日本とカナダのスポーツ界について熱く語り合う。海外に出たがる日本人が減少してきている中、彼らはカナダに何を求め、学んでいるのであろうか。そして、彼らの目標とは…。

●日本のスポーツ界の現状

将平 まず海外に出たがる選手がいないですね。日本人は安定を求めちゃう。少なくともバスケの世界は、海外に出る勇気がないという人が多いですね。大輔さんのようにハングリー精神がある選手が珍しいという状態。

哲平 日本はまだ、選手がプロレベルでプレーを出来る環境が少ない。こっちだとプロのリーグがたくさんあるので、選手はリリースされても拾ってもらってプレーが続けられる環境がある。例えば、メジャーリーグのスプリングトレーニングには契約してない招待選手がたくさんいるんですが、これからのことを聞いても「今は決まってないけど、独立リーグでやれるところがあるから」と言って、焦りがないんですね。だから自分のモチベーションを維持しやすい。日本も、独立リーグがもっと増えてくれたらいいんですけどね。

  身近なところで言うと、日本の子どもたちがスポーツをする環境が少なくなってきましたね。バスケのリングとか見ないですからね。公園の遊具すら減っていると聞いてます。

将平 地元のリングは、近所から騒音の苦情がきて、なくなってしまいました。校外でやっちゃいけないという学校も。

大輔 大阪は市の条例で3m以上の遊具を立てられないので、リングのゴールがはずされてるんです。

  スポーツをやる環境では地域の住民の理解も大切。彼らの協力が必要です。


●カナダのスポーツ界の現状

哲平 選手たちが移動慣れしてますね。バス移動で13時間とか普通。だから札幌−福岡間なんか苦にならない。

大輔 僕も5時間の移動が苦にならなくなりました。あと、こっちのリーグでは1ヵ月で20試合もある。9日間で6試合とか日本のリーグではありえない。タフさが違いますね。

  シーズンごとに違うスポーツができるのも日本とは違う。夏はサッカーやって冬はホッケーとか。

哲平 だからおもしろい話、こっちでは野球とバスケ両方ドラフト掛かる人もいますよね。

将平 バスケに関してですが、日本人は引き出しの数が少ない。オンコートでもオフコートでも。日本人は一つのことに集中してやっていくので、終わったら本当に無職になる可能性もある。NBAのナッシュは今現役だけど、スポーツクラブを買い取って、どんどん拡大している。日本人選手はほとんどサラリーマンだから、現役をしながら副業ができない。

  日本の選手は引退したら不安でいっぱい。例えば中田選手なんかは、現役時代に会計士の資格を取っている。日本人にしたらおかしな感覚だけど、海外の選手から見たら当たり前。カナダの選手は、オフの時期にスポンサーを回ったり、ビジネスを考えている。先輩選手とかにアドバイスを聞いたりと、日本ではなかったです。

●カナダで何を学ぶのか

哲平 こっちに来て監督って大事だなって思いました。日本は監督に対する評価はこっちほどではない気がします。アメリカの大学の監督は、年収で1〜2億ドル貰って強くしてる。

将平 日本の感覚だと、いい選手がいれば勝てると思ってる。選手の方が監督よりお金もらってるなんて、こっちではあり得ない。いい選手をコントロールするためにいい監督が必要なのに。若いコーチがたくさんでてきちゃって、運営側の都合でチームが回ってしまっている。だから日本は、いい選手も指導者も育たなくなってしまっている。

哲平 こっちでは監督になるのに選手としてのキャリアはあんまり必要ない。監督としてのキャリアがすごければ、メジャーの監督になれる。その代わり、ステップを踏んでいる。高校→大学→NBAとか、マイナーから順を追って最終的にメジャーの監督とか。監督の役割も組織によって違う。例えばCanadiansだと、監督は若い選手を育てて次にステップアップさせる。それで、選手を育てた監督をチームが評価してステップアップさせる。監督も選手同様に育てるという感覚ですね。


●これからの目標

大輔 僕はずっとバスケをやっていきたいですね。場所にこだわらず、できるだけ現役でいることが目標です。

将平 バスケの楽しさを後世に伝えていきたい。だから日本のバスケのレベルを下から上げていくことが目標。日本のスポーツビジネスに新たな風を吹かせたいというのもあります。スポーツとして、ビジネスとして、エンタメとして、日本に新しいものを作りたいですね。

哲平 こっちで野球をやっていきたいと思って来たけど、こっちに来て日本の野球の良さにも気づいた。だからこっちで学んだスポーツビジネスを日本に還元したいと思っています。日本の株主をこっちにもって来たりとか。

  日本人選手は、チャンスがあれば世界に出て行って欲しい。最初はこっちに来ることを応援してたけど、今は逆にこっちに来た人に日本にそれらを持ち帰って欲しいと思う。そうすれば日本のスポーツ界は大分変わると思う。

将平 僕もそう思って、こっちで学んだことを日本に持って帰りたいですね。

  ジョン万次郎だね(笑)。


●余談

哲平 こっちのお客さんの質って日本と違いますか?

大輔 全然違いますね。試合を楽しんでるなぁって。去年初めてマリナーズの試合を観に行った時、すごく楽しかったです。甲子園の野次とは全然違う(笑)。

  日本の応援も、たまに恋しくなるけどね。

哲平 韓国とかもチアリーダーとかいるし。

  プレーヤーも観客を喜ばせる方法を知ってますよね。

将平 チキンダンスは日本でも流行ると思うんですけどね。

哲平 僕もそう思いますね。去年ビクトリアに来たサッカーのU-20日本代表は、侍のパフォーマンスとかして話題になってましたよね。

哲平 日本のファンは、もっとアグレッシブになってもいいですよね。

大輔 全員が阪神ファンになったらいい。

全員 そう、そう、そう!!

  日本人も、みんなああなったらもっと盛り上がるよね。

哲平 毎週、試合前にスポーツバーとかいっぱいになりますよね。関西人の口は、本当特有ですよねぇ。

大輔 (大阪出身の自分は)あんま意識したことないけど、大阪人は気質がアメリカ人と似てるって言われますね。言いたいこと言っちゃうところが(笑)。


●聞き手まとめ

 両国でスポーツ界の表・裏舞台を経験している4人のお話を聞いて「北米の選手は引き出しが多い」という意味を良く理解できた対談だった。例えば、北米の学生選手は、成績が悪かったらプレーをさせてもらえない。日本の場合は、スポーツができるならスポーツをやっていればいい。北米のプロの選手は、現役時代から引退後のことを考えて自分のビジネスを始めたり、資格を取ったりと、日本のように「スポーツ一筋」ではなく、むしろ一筋でない方が当り前という、スポーツに対する美徳の違いがとても興味深い。残念ながら、日本のスポーツ界ではその美徳を金銭的に支えることができない現状があるようだ。世界で活躍する日本人アスリートの育成には、技術の向上だけではなく、監督やマネージメントなど、スポーツをとりまく環境を様々な方面から変えていく必要性があるという点に、4人は大きく頷いていた。5時間に渡る対談。彼らのスポーツに対する情熱を語るには、とても足りなかった。

聞き手 ― a.s.u.


 
 
 
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