
特別インタビュー ヴァイオリニスト 松本蘭さん
コスプレから始まったヴァイオリニストへの道
9月12日に行われたVancouver Metropolitan Orchestraの8th Annual Chamber Orchestra Concertにゲストとして参加したヴァイオリニストの松本蘭さん。3歳の頃からヴァイオリンを始め、音楽の名門桐朋学園を卒業、同大学研修科を終了した注目のヴァイオリニストだ。ヴァイオリンを始めたきっかけは、「コスプレから入りました!」と茶目っ気たっぷりに笑って話す蘭さん。当時人気だったTVのCMで、宮沢りえがヴァイオリンを弾く様子があまりにもかわいらしかったので、お母様が、宮沢りえと同じ赤いスカートに紺のブレザーとベレー帽、ヴァイオリンを持たせたのが、蘭さんとヴァイオリンに出会いだったそうだ。とはいえ、蘭さんはヴァイオリンに魅せられていった。小学生の頃にはもう、ヴァイオリニストを志していた。音楽家の家庭ではなかったが、蘭さんの夢を叶えるために、家族は様々なコンサートに連れて行ったり、音大の附属小学校に転校させたりと、献身的にサポート。「今、ヴァイオリニストとして活動できるのは、母のお陰だと最近本当に思いますね」。子どもの頃、国際的なヴァイオリニスト前橋汀子さんへの憧れもあり、あんな素敵なヴァイオリニストになりたいという夢は、同時に蘭さんをもっと音楽の世界に引き込んでいった。
自分の内面を磨くことが大切
順風満帆にヴァイオリニストの道を歩き始めた蘭さんだが、桐朋学園に入学した時に、挫折の時期があった。同大学に通う同窓生がハイレベルで、自分は本当にヴァイオリニストになれるのか不安に感じたという。だが、先生の「自分と人と比べるなんてばかげたことだ。音楽にはこれといったものがなく、一人ひとりが違うのだから。生きてきた環境も一人ひとり違うのに、なぜ人と比べて落ち込むのか?」という言葉を聞いて、吹っ切れたという。「そうか、音楽にはパーソナリティーが表れるものなんだ。自分を高めて、内面を磨き、今日は昨日よりも良くできたと納得できるようになろうと考えるようになりました」。蘭さんの演奏を見ていると、まっすぐに伸びる竹を思い出す。その清々しいまでにまっすぐで、聴く人の心にダイレクトに入ってくる音色は、少し男性的でもある。その辺を聞くと、「私の周りの人は、私のことを男性だと思っています(笑)。竹を割ったような性格だってよく言われるんです」と笑う顔はどこか、少年のようでもある。「私って、思い悩んでも仕方がないって思ってしまうんです。そういうところが男性的って言われるのかな〜?」と苦笑しながら話す蘭さん。ヴァイオリンの魅力について、「楽器としては、あの形が好きですね。曲線が女性的だし、首のところに密着させて奏でると、感情が伝わるというか・・・。音楽って言葉を超えたコミュニケ−ションだと思うんですね。言葉では伝えきれない心の奥にある感情の襞みたいなものまで、伝えることができるという。繊細で複雑な感情表現を私の場合は、ヴァイオリンだと上手に表現できるんです」と目を輝かせる。
ミス着物とヴァイオリン
2009年、蘭さんが知らないところで、ミスコンテストの選考が進んでいた。お母様が蘭さんに内緒で応募したものだ。「実は昔、母は違うミスコンテストにも応募したんです。その時は、大喧嘩しました。女性を並べて美を競うなんてナンセンスだと思っていたんです」。ただ、ミス日本への応募はお母さんの最後のチャンスでもあった。応募はしたものの、どんどん選考が進んで最終選考まで来た時、ついに隠し切れなくなったお母さんは、蘭さんに話さざるを得なくなった。ミス日本に応募できるのは25歳までで、これが最後だからという母に、今回は親孝行のつもりで受けたという。「でも結果的に、この経験は私にとってはプラスになりました。世の中には、こんなに美しくて素敵な女性がいるのだと、刺激を受けました。そして、このコンテストのために半年間勉強した歩き方や、お化粧の仕方、自分に似合う服の色を考えたり、スピーチの仕方や内容などは、私がこれから舞台に立つ上でとても役に立つ知識だったんです」。お母様の夢は、蘭さんをどんどん大きく変えていく。ミス着物とヴァイオリニストをこなした昨年、蘭さんはさらに内面に磨きをかけ、音楽の幅を広げた。ミス着物の役目を終えた今、ヴァイオリニストとして、更に大きく美しく成長し、人々の心に語りかける音を届けて欲しい。その凛とした生き方を大切にして。