ツナママ日記
 


Taka 太田 喬之(おおた たかゆき)
生年月日:1977年9月24日
出身地:和歌山県
趣味:映画鑑賞、バイク
好きな作家:野田知佑、椎名誠
ホームページ:http://www.bakedpotato.ca

今年の8月17日に行われたBonfire Music Festivalにて

夢を追う。これは、子供すぎず、大人すぎない者にだけ許された特権。
バンクーバーにも、そんな夢追い人たちがいる。彼らが追いかけるものとは何か。
どのようにしてその夢とめぐり逢ったのか。
彼らは今、この街の空気の中で何を感じているのだろうか。
彼ら1人1人が自らの中に秘めているストーリーを聞く。

                       
抗うことなく自然体で、自分のスタイルを貫く
第58回: ベース奏者

Taka 太田 喬之(30歳)

音楽に没頭し、心酔し、どこまでもそれを追求しようとする若者は、いつの時代も後を絶たない。ここバンクーバーにも、自分にとっての音楽とは何なのか、という疑問をずっと模索しながら、やっとその答えを見つけた青年がいる。「流されているうちが華」と笑って話す彼が辿り着いた心境とは…?
 
   

 「僕にとって、学校の科目の1つでしかなかった音楽が、中学1年のときに先輩からギターを買ったことで変わりました。あの頃はもう音楽に夢中で、学校が終わるとすぐ家に帰ってギターを弾いていましたね」と話し始めたTakaは、一見寡黙そうな青年だ。しかし、好きな音楽の話になるともう止まらない。時に淡々と、時に激しく、自分にとっての音楽について語ってくれた。

恩師を通じ、ギターからベース奏者に
 Takaが初めてバンドを組んだのは、高校生の時。その頃から、ブルース、ロック、ポップ、ヘビーメタルなどの音楽を聴き始めたという。「僕にとっての高校時代、イコール、バイトと音楽でした」。高校卒業後は、故郷の和歌山を離れ、大阪の音楽専門学校に進学。「趣味を同じくする人が一堂に集まる場って、考えてみたらちょっと異様ですよね(笑)。そんな、音楽だけに没頭できる環境に2年間もいられたことが嬉しかったです」と当時を振り返り懐かしそうに笑うTakaは、いくつかのバンドに参加して演奏を続けた。そんなある日、先輩を通じてあるライブハウスの店長と知り合う。学校を卒業した後はそのライブハウスで約1年半働いたが、環境を変えるため上京を決意する。  東京でも早速新たなバンドに所属し、バンド一筋の生活を送っていた03年、ベース奏者として有名な早川岳晴氏の師事を仰ぐチャンスに恵まれた。それまで定職に就かずバンドとバイトだけの生活を送っていたTakaは、何の保証もない将来に常に不安を抱えていたという。「自分はどんな音楽をやりたいのかもずっと分からなくて…。でも早川先生と出会って、音楽だけでなくプロミュージシャンとしての考え方を学んでいくうち、音楽だけにがっつかなくてもいいんじゃないか、と思えてきて。自分に個性があれば、良い方向に自然と流れて行く。そう考えると、これからも一生音楽と付き合っていける気がして、心のモヤモヤが消えてなくなりました」。

ライフワークとしての音楽
30歳を目前に「大阪、東京ときたら、次は海外に行くしかない!」と、ワーキングホリデーを利用してバンクーバーにやって来たのが今年3月。語学学校に通いながらローカル誌でバンドを探し、興味を惹かれたのが現在所属しているBaked Potatoだった。「僕が目指す音楽の方向性が、彼らと近かったんです。英語があまり喋れないという問題はありましたが、(ミュージシャンとしての)僕の耳が良いからと、快くメンバーに加えてくれました」。  バンド内唯一の日本人であり、最年少。やりがいはあるが、言葉の壁を感じることもある。「自分の意見を言いたいときに、英語の音楽用語が分からないので細かいことまで伝えられない悔しさはあります。それでも、絶対そこで諦めないで簡単な英語でも何とか伝える努力はしますよ。そのせいか、メンバーも以前にも増して僕の話に耳を傾けてくれるようになりました。何よりも、早川先生に音楽の基礎を学んでいたから、たとえ英語がイマイチでも彼らについていけるんだと思います」。
現在は、更なる音楽と自分への可能性を探るために、どうしたらカナダへ残れるかを考えている、と話すTaka。「こちらでずっと音楽を続けていきたいですが、基本的にはいつもと同じで流れに任せています(笑)。音楽が僕の人生の中心である必要はないけれど、絶対に止めることはないでしょうね。プロになるのではなく、音楽を学びたいと思う人に教えたいという夢はあります。自分が早川先生に出会って大きな影響を受けたように、僕も誰かに影響を与えられる、そんな存在でありたいと願っています」。


プレーできる喜びを常に感じて
  ホッケーどころかスケートさえも初心者だったため、まずは氷の上を滑る練習から始め、次第にチーム練習にも参加させてもらえるようになった。厳しい練習ではあったが、辛いと思ったことは1度もないと言い切る晶子。当時、先輩から言われた言葉が「上手くなりたければ、誰よりも早くリンクに上がり、1番最後にリンクから降りろ」。地道な努力を重ねるうち、段々とホッケーの形になっていったという。「少しずつでも上手くなっていく自分が嬉しくて。でも、週1回の練習だけでは物足りず、他チームの練習にも参加していました。その参加費用のため、たくさんバイトをしていましたよ」。大学を卒業し、今年の春カナダにやって来た晶子がホッケーのできる場所を探していた時、あるスケートリンクで1人の女性を見かけた。「ひと目見て『ホッケーをやっている人だ!』と分かりました。当時は満足に英語も喋れませんでしたが、気が付いたらその人に話しかけていました」。
  現在はその女性に紹介されたチームに所属し、昼は仕事、夜はホッケーの日々を送っている。大学時代との大きな違いは「周りは年上のカナダ人ばかり。もちろん言葉の壁を感じることもありますが、そんなことで悩んではいられません! ホッケーという同じ情熱がありますから」。普通の大学生だった晶子がホッケーという世界に飛び込んで早3年。「将来のことは分からないけど、これからもずっとホッケーと向き合っていきたい」と語る彼女の瞳は、リンクにほとばしる氷の粒のようにキラキラと輝いていた。




  「誰かに『君はどういう生き方をしてきたのか?』
と問われたら、僕は『音楽』と答えると思います」

―専門学校を卒業後の仕事は?
Taka:尼崎にあるライブハウスで働いていたのですが、本当にいろんな仕事をしました。バーテンダー、アーティストとのスケジュール調整をするブッキングの仕事、チケットの発券、照明、ステージの手伝い…。全て裏方の仕事です。インディーズのCD制作にも参加しましたよ。ライブハウスで働いていると、とにかくいろんなバンドの演奏が聴けるので、耳が肥えるんですよ。働いていた約1年半の間に、千以上のバンドを見たんじゃないかな。

―好きなミュージシャンは?
Taka:最も影響を受けたのは、自信の音楽の方向性を見失っていたときに知ったThe String Cheese Incidentというアメリカはコロラド州出身のバンドです。彼らはジャム・バンドといって、原曲にとらわれない自由な演奏を行うバンド、つまり、ジャンルは関係ないんです。そのスタイルはバンドによって様々ですが、僕には彼らのスタイルが1番しっくりくるというか。でも彼らの音楽は、人によって好き嫌いが分かれるでしょうね。なんせ、20分以上の曲もありますから(笑)。

―カナダで1番印象に残っているライブは?
Taka:サンシャインコーストの森の中で行われたBonfire Music Festivalですね。これは、8月16〜19日に行われたインディーズバンドのための音楽フェスティバルなんですが、期間中はずっと雨だったため、地面はぬかるみだらけで観客も泥だらけ。でも、いざステージが始まると、観客が一斉にザーッと森の中から出てきて…。それを見て、ただただ感動しました。



 

―その時のことを詳しく教えてください
Taka:コンサートの様子はサンシャインコーストの地方紙『Coast Reporter』に掲載され、ラジオ放送もされたんですよ。こちらの観客は反応がストレートで分かりやすいので、それもまた楽しい。また、参加した日本人が僕1人だけだったという事実も嬉しくて。Baked Potatoのメンバーでなかったら、絶対こんなフェスティバルに参加することなんてなかったでしょうから。当時の僕はサンシャインコーストがどこなのか、どうやって行くのかもわからなくて「そこに行くのにパスポートはいる?」と、メンバーに聞いてしまいました(笑)。

―カナダにいるうちにやってみたいことは?
Taka:ユーコン準州に行きたいですね。というのも、野田知佑さんの『ユーコン漂流』という本が大好きなんです。これは、野田さんがカナダからアラスカのベーリング海までのユーコン川3千kmの旅を1人カヌーで下った様子を描いたもので、これを読んでカナダへの興味がさらに増したと言っても過言ではないですね。

―最後に、Takaさんにとって音楽とは?
Taka:“生き方”ですかね。誰かに「君はどういう生き方をしてきたのか?」と問われたら、僕は「音楽」と答えると思います。そして、それを教えてくれた早川先生に、本当に感謝しています。

聞き手・出口 範子


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