| 第1フレーズ:Yuka in wonderland
由佳は、3歳から15歳までピアノのレッスンに励んだ。そこで培われた音感と天性の美声が、高校生になる頃に萌(きざ)した折しものカラオケブームで、実を結ぶことになる。自他共に認める歌唱力。しかもカラオケボックスの女王だけでは終わらない。他校のバンドにボーカルとしてスカウトされ、ライブハウスにデビュー。拍手喝采の中、スポットライトを浴び立ちつくす由佳―観客の前で歌うことで湧き立つ、えも言われぬ悦楽に浸りながら―その感激が、可憐な乙女にスターの道へと思いを駆り立たせるのも、無理はない。しかし、芽生えかけたその夢のつぼみを、摘み取ってしまったのも、彼女自身だった。「ある日、オーディションのために録音した自分の歌を聴き、ショックでした。歌に自分らしさがなく、ただのコピー。それと発声もしっかりできていないし…今までは自惚れに過ぎなかった」―1人の歌手が誕生した瞬間である―この日を境に、由佳はひたすらに歌の練習へとのめり込んで行くのであった。
第2フレーズ:One note jazz
高校を終えた由佳は、ゴルフ場で1年勤めたが、歌に専念するために退職。その数日後、古風で小さなジャズバーが、歌い手を募集しているのを見つけた。ジャズに特別興味があったわけではない。でも、「歌えるなら!」と気軽に応募。そこで課題曲として手渡されたのが、レイ・チャールズのヒット曲“Georgia
on my mind”。フランク・シナトラ盤なども聴き調べ、彼女なりに歌いこなした。そこで店員兼シンガーとして採用された由佳だが、まだまだ歌一本で生活できる身分ではない。余儀なく昼はOLをし、そして夜はジャズの世界へと、二つの顔をあわせ持つ生活が始まった。
第3フレーズ:Everything happens to her
由佳が得意とするのは、スタンダードナンバー。そのレパートリーが増えるにつれ、ジャズの持つ底知れぬ魅力により一層引き寄せられ、いつしかジャズとは切っても切れない仲に…。そして1年が過ぎた頃、店で知り合ったピアニストの誘いで、ホテルのラウンジで歌い始める。それがきっかけとなり、数々のミュージシャンと繋がりができ、高級クラブのステージにも立つようになった。
ではジャズ漬けなのかと思いきや、決してそうではない。コマーシャルやテーマソングの吹き込み、またジングルシンガーとしても売れている。成人式などでアカペラを唄っていた時期もあった(その時のユニット名がavi)。
第4フレーズ:Over the rainbow
aviは、新曲に出会うたびに歌詞を訳し、その心情やシーンなどを自分なりに思い描き、発音はCDやテープから学び取るようにしていた。だがある時、海外からの友人にRとLの発音ができていないことを指摘され、愕然とする…が、そこで一念発起、海外留学を決意した。
由佳は今年の1月カナダへワーホリで入国すると、まずESLへ。そして授業の後、ピアノラウンジなどに名刺を差し出し、 歌える場を一人探し求めた。ホテル“The
Yale”で催されたジャムセッションにも飛入りで参加。そこで賞賛してくれたカナディアンに、とある1軒のバーを紹介された。ここではブルースの“Route66”をジャズ調で披露、大きな反響を呼ぶ。
ESL修了後aviは、これからの活動資金や生活費を稼ぐため、ギフトショップでアルバイトを始めた。その合間を縫って配る名刺の数は日ごとに増えている。この努力が報われるのは、そう遠くはないだろう―ある時は軽快に弾み、ある時は哀愁を帯びる、その魅惑的な歌声が、メロディーを奏でるステージという夜空で煌くその日まで…。
【この取材の時点でaviは、未来のボーカリストにチャンスを与えようと企画された『Japanese Dream Audition』に参加するための準備にも大わらわであった。】
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