森 翔吾(モリ ショウゴ)
1984年生まれ、愛知県出身。自分探しの旅として、2005年1月にカナダの地を踏む。その後、バンクーバーで活躍されている日本人写真家、後藤えむさんとの出会いを経て、モデルを目指すようになる。現在、NEW IMAGE COLLEGE OF FINE ARTSに籍を置き、モデリング、演技を勉強中。
http://www.shogoart.com
ショーが終わって、ホッと一息つく3人の挑戦者
Photo by Sean Azar
夢を追う。これは、子供すぎず、大人すぎない者にだけ許された特権。
バンクーバーにも、そんな夢追い人たちがいる。彼らが追いかけるものとは何か。
どのようにしてその夢とめぐり逢ったのか。
彼らは今、この街の空気の中で何を感じているのだろうか。
彼ら1人1人が自らの中に秘めているストーリーを聞く。


『見せる=魅せる』全身全霊に“表現の魂”を込めて
第34回:モデル
森 翔吾(21歳)


“自らの体を張って…”という表現が最も似合う職業、モデル―。“着せ替え人形”だと揶揄する人もいるが、果たしてそうだろうか? 一枚一枚、異なった衣服を纏い、それらと共に表情までをも変化させるモデルという職業は、一つのアートではないだろうか?

 

人生の転機、それはカナダへ来たこと!
 21歳という年齢は何を意味するのだろう。20歳で年齢的には大人と認められるが、自分自身の中では未だに将来への不安・葛藤がある“中途半端で未完成”な時期ではないだろうか? そしてそれは言葉を変えれば、“パワーを秘めた柔軟性”を持っているということだ。
 2005年1月30日、バンクーバーへやって来た翔吾は20歳だった。高校卒業後、料理学校を経てホテルでシェフとして働いていた翔吾だったが、心の中には常に何か引っかかるものがあった。“夢”だ。幼少頃から学生時代まで、幾度となく変わってきた“将来の夢”。シェフとして働く現実は“夢”と言えるのかと苦悩した翔吾は“自分探しの旅”としてワーキングホリデー制度を利用し、カナダへとやって来たのだった。
 バンクーバーに来た翔吾がまず始めにしたことは英語学校への入学。しかし学校へ通い始めても翔吾の心の中は満たされはしなかった。『自分の中には何かが潜んでいる。それが知りたい、自分を知りたい』と日々葛藤していた翔吾は、日本人写真家の後藤えむ氏主宰の写真コースと出会う。目で見る世界とファインダーから覗く世界との違いに驚き、その新鮮さに魅了された翔吾は、後に後藤氏のカメラアシスタントも務めるようになった。

未知の世界だからこそ頑張れた

 「翔吾君、これやってみない?」ある日、翔吾は後藤氏に言われた。日系メディア・ホームページ内での、夢に向かって頑張る若者を主人公にしたドキュメンタリー番組制作の話だった。3人の挑戦者がモデルとしてファッションショーの舞台に立つというストーリーで、主人公の一人としての打診だ。モデルという職業は未知の世界ではあったが、何かを探している翔吾にとって好チャンスだった。
 振り付けという課題を出された翔吾は2ヵ月間練習に明け暮れ、プロのモデルと同等に受けたオーディションに見事に合格した。しかも、男性の募集人数はたった3人という狭き門を潜り抜けたのだ! 頭の中が真っ白になりながらも無我夢中でショーをやり遂げた翔吾は、体の中から突き抜ける興奮を味わった。「これこそ自分だ!」。
 その後、本格的にモデルを目指したいと考えた翔吾は、2005年10月にモデル学校の扉を叩いた。ポージング、表情、同時に個性を出す…思った以上の難しさに悩み、そして立ち止まり、再び突き進む翔吾。11月からは演技の授業も取り始めた。
 「僕の持って生まれた顔、体、声。全てが個性。僕は僕一人しか持っていない、誰にも負けない個性です」そう語る翔吾は、10月24日に21歳の誕生日を迎えた。初めてカナダの地を踏んだ20歳の顔とは、全く違うものに成長していた。



  「“のめり込む”って、こういうことなんだなって思います」

―幼少の頃からモデルに憧れていたのですか?
翔吾:モデルという職業は全く視野に入れてませんでしたね。考えたこともありません。中学時代は音楽に夢中になって、将来はミュージシャンになりたいな、なんて漠然と考えていました。

―全くの未経験者がオーディションに合格とは、かなり苦労をされたんじゃないですか?
翔吾:はい、そうですね。人前で自分を表現することは初めてだったので、毎日3時間ウォーキングをしたり、自宅で振り付けの練習をしたりと、1日中ショーのことばかり考えていましたね。本当“のめり込む”って、こういうことなんだなって思いました。

―現在、学校に通われいますが、持って生まれた素質を大切にするモデルという職業で学校に通うメリットとは何ですか?
翔吾:僕は恥ずかしがり屋なので、始めはカメラの前で固まっちゃったりしたんです。それがプロモデルの先生の指導の元、今では自然な振る舞いができるようになりました。持って生まれた素質を尊重することは大切ですが、それらをプロフェッショナルに引き出してもらうということも重要だと思います。また、モデルはただ写真を撮られるだけじゃないんだということも学校で学びました。人と人との仕事だから、カメラマンとのコミュニケーションが大切で、それが写真の写りにも影響します。僕の場合、前に写真を習っていた経験がすごく役に立ちました。

―バンクーバーへ来られてから、自分自身の中で変化はありましたか?
翔吾:自分のペースで進む大切さを知りました。日本に住んでいるとどうしても周りのペースに合わせがちになりますが、バンクーバーは良い意味で個人を尊重してくれます。周りがこうであるから、あなたもこうしなさい、なんて言いませんよね。このゆったりとした環境が精神的にも良い影響を与えてくれるし、モデルとしてのクリエイティビティーも引き出してくれるように感じます。
  ―今後の活動予定を聞かせてください
翔吾:12月15日に地元デザイナーのショーに出演します。僕にとっては2回目のショー出演なので、日々努力をしてショーに備えていきたいですね。今すごく張り切っています(笑)

―最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。
翔吾:何か新しいことに挑戦するとき、『きっと、また駄目なんだろうな』なんて諦めないでください。“壁”は人を成長させるためにあるんです。立ち止まってもいい、自分のペースで自分の前にある問題をゆっくり解決していけばいいと思います。何かに挑戦し、それをやり遂げることによって、僕のように初めて自分が見えてくるんじゃないでしょうか。



【お互いになぜか照れ笑いで始まった今回のインタビュー。ジャケットにジーンズという至ってシンプルな洋服を纏っていた翔吾君だが、“理由もなく”彼に惹かれたしまった。オーラというのだろうか、何か大きなものに心を捕らわれた、そんな感じを抱いた。ポツリポツリと丁寧にそして情熱的に“夢”を語る翔吾君。彼のこれからに目が離せない…。】
聞き手・文 ギブソン有里