さと子さんのステイ先
エバンス家の場合
 
 さと子さんがステイしているのは、ノースバンクーバーにあるエバンス家。1999年からホストファミリーを始め、今までに15か国からの留学生を迎えたという。お父さんのリチャードさん、お母さんのスベトラナさんを中心にして、現在さと子さんのほかに、韓国、トルコ、ブラジルからの計4人の女子留学生たちがステイしている。お父さんは皆から“キング”、お母さんは“クィーン”と呼ばれ、学生たちもお父さん、お母さんから“プリンセス”と呼ばれている。気分はさながら「ロイヤルファミリー」だ。とにかく冗談で日が上り、冗談で日が暮れるといった感じの雰囲気で家中いつも笑い声で満ちている。
 お父さん、リチャードさんのモットーは3つある。「学生がくつろげる環境を作る」「一人一人に自信をつけさせる」「英語だけでなく人生を学ぶ場を提供する」これらのことを常に心掛けていると言う。また、学生たちが悩みを抱えていると、人生の先輩として、常に丁寧にアドバイスをするようにしている。さすが一家の大黒柱、父親としての役割を実の父のように真剣に受け止めている。
そういう真面目な態度が信頼感を生み出すのだろう。昨年の父の日には、以前エバンス家にステイしていた学生たちから20通ものカードが届いたという。「日常のキングはいたってリラックスしていて、とにかくジョークが大好き。特に私たちを悪気のない冗談でからかうのが得意で、英語だけでなく“人をからかう術”もついでに教えてもらっています」とさと子さんは言う。自分でホームメイドワインを作ってしまうという特技をもち、料理もお母さんと週半分で分担して作るという、夫としても文句ナシの「ザ・キング」だ。
 お母さん、スベトラナさんはとても明るくて親切。もとESLの先生という経歴を持つ彼女は、外国人の生徒の応対をよ〜く心得ている。家では“English Only”を徹底し、また本人の承諾を得た上で英語の前置詞や時制の間違いを会話の中で直してあげたりもする。ちょっとしたフレーズなどわからないことを質問すれば、いつでも親切丁寧に教えてくれる。まるで、やさしい家庭教師が一緒に暮らしているかのような羨ましい環境である。
 ホストファミリーを始めて、二人が共通して感じている点は、“与え、与えられることの喜び”と、“常に若いエネルギーをもらって元気でいられること”なのだそう。実の子供はすでに巣立ってしまっているので、今では留学生たちが真の家族も同然。「時には厳しいことも言うが、それも全ては“愛情”から出るもの」と二人は口を揃える。
去年のエバンス家のクリスマス。お母さんが巨大なターキーを焼いてくれた
エバンス家外観
時にはケンカもするが、すぐ仲直りするというエバンス夫妻
 
コミュニケーションがKEY
 エバンス家の玄関を入るとすぐ左手にメッセージボードが壁に貼られているのが目につく。その上には両親と学生たちの名が書いてあり、帰って来たら“イン”出かける時は“アウト”のところにマグネットを置くようになっている。これで皆がどこにいるかがわかるし、何か伝言があればそこに記入すればいい。また家族の中で不満や問題が生じた時は、家族会議を開いて素直に自分の気持ちを相手に伝え、すぐに問題を解決するよう努力している。だからこそ、ストレスをためないで気持ちのいい生活ができるのだ。
我が家自慢のメッセージボード

楽しい家族旅行
 旅行が大好きというエバンス家はよくいろんなところに出かけて行く。近場でのハイキング、ラズベリー・ブルーベリー狩り、スイミングなどなど。先週はなんと家族で温泉へ。両親が学生たちを招待したのだそう。旅行中、昼間は各自ジャグジーにゆっくり入ってリラックスしたり、あるいはサイクリングなどをして自由に行動し、夕食時は皆が集まって一緒にご飯を食べながら、その日にあったことをワイン片手に話し合う。適度なプライベートが保てて、しかも家族団らんの時ももてた、最高のプレゼント旅行だったようだ。
ハリソン・ホットスプリングに家族旅行へ出かけた時の一枚

先輩と後輩
 エバンス家は常に4人の学生を住まわせているが、あるルールがある。それは長くいる“先輩”が新しく入ってきた“後輩”にアドバイスをする存在になっていくこと。部屋は、先輩になればなるほどグレードアップし、最終的には車を運転する特権さえ与えられた学生もいる! こうすることで先輩たちに責任感が生まれ、不馴れな学生のよい相談役になっていくのだ。家庭が社会の一部として機能している。
ここのハウスメイトたちは本当に仲良し!

お国の料理でホッと一息
 ホームシックになりがちな学生に対しては、その子の口に合う料理を週2回は出すようにしているのだそう。この日は日本のカレー。グリーンピースのたっぷり入った彩り鮮やかなカレーだ。炊飯器でふっくらと炊いた白いご飯と一緒に食べると、まさに“日本の味”。つけあわせには韓国人の学生にとって欠かせないキムチが添えられていた。食べ物からくるストレスが、ホームシックを引き起こすきっかけになり得ることを熟知している、お母さんの優しい気遣いが見て取れる。
今日は皆の大好物、カレー
 
エバンス家のハウスメイトたち
 韓国人のウンニョンさんは、新しい人が入ると行なう恒例のイベントが強く印象に残っていると言う。「みんなで韓国料理店に行った時、私が韓国語で注文したり、料理の説明を皆にしてあげたりできたことがとても嬉しかった」。こうすることでホームシックを緩和し、異文化の一端をほかの家族に伝えることができる。
 トルコ出身のシナムはつい先日誕生日だったが、その時はお父さんとお母さんが特製のトルコ料理を作って彼女をびっくりさせたのだそう。「プリンセスのためにと冠と杖をジョークでプレゼントされました。この家では皆でそれぞれの誕生日を祝うの」とにっこり。そこへお母さんのスベトラナが愛嬌たっぷりに「さて、次は誰の誕生日でしょう?」と皆に聞くと、それぞれが口をそろえて「お母さん、わかっているよ、次はお母さんでしょ!」ここに住んでいる人は、皆が「本当の家族」なのだ。
ハウスメイトのシナムさん(左)とウンニョンさん(右)